私のチャレンジシート




「社員一体経営」に磨きをかけるため


 会社の中に一切の隠し事を作らない



 勤めていた広島県下の大手メガネチェーンを解雇され、1986年、同僚と一緒にメガネの21(現21)を設立した。
前の勤務先で、先代社長が突然なくなってお家騒動が起こり、会社の私物化を図ろうとする後継社長と
対立した我々が会社から追い出されてしまったのです。

 トップが強引に動かす会社の理不尽さを本当の意味で「社長のための会社」にしようと努力を続けてきました。

 100%社員の持ち株制にすることや、社長を2期4年の交代制にしたこと、利益剰余金を内部留保せず社長に
分配してきたことも、すべては理想の会社を目指すため。中でも、力を入れたのは、会社の中に一切の隠し事を
作らないことでした。

 各店舗ごとの経営状況から、会社の給与、人事評価まで、あらゆる情報を全社員に公開し、社長から社員、
アルバイトまで全員が常に同じ情報を共有できるようにしたんです。もし、人事評価に不満があったら、意見を
申し立てれば、周囲と論議して調整できるような制度も導入しました。

 何もかもオープンにすることが、権力の一極集中を防ぐ良い方法だと思ったからです。
 創業当時に比べ、今ではパソコンやネット接続費が安くなり、情報を社員全員で共有することが容易になりました。
「社員のための会社」を支えているこの仕組みに、より一層磨きをかけていく―。これが、私のこれからの目標です。

 21流の開かれた経営の長所は、働く社員にとって公正なだけではありません。

 会社は、一定以上に大きな組織になると、経営軍と社員全員が直接離せなくなります。
そうなった場合、ピラミッド型の組織を作って上意下達で”伝言ゲーム”をして方針を伝えるのが一般的なやり方でしょう。

 しかし、中間管理職を置いてトップダウンで仕事を進めるやり方は、必ず経営効率が落ちてしまいます。

 その点、社長も若手社員も同じ情報を共有する当社のようなフラットな阻止意であれば”伝言ゲーム”が必要ない分、
すばやく仕事が進められます。

 また、若手社員は社内で公開されている先輩たちの過去の仕事のやり取りを閲覧することで、新しい業務をどんどん
仮想体験できます。ですから、若い社員でも次々に新しいプロジェクトを立ち上げようと、アイデアを提案してくれます。
情報のオープン化は社員教育にも効果的なんですね。

 最終的には社内だけでなく、取引先まで巻き込んで、社員一体経営を広げていきたいと考えています。

 既に、オリジナル商品の部品製造を委託している一部の会社とは、組織の壁を超えて、まるで一つの会社のように
ネットで議論しながら仕事を進める体制になっているんですよ。



                                    出典:『日経トップリーダー』 2009年11月1日 11月号 p106から転載

                                                             日経BP社の許可を得て掲載