この「スキル診断制度」の最大のメリットについて、「本人と上司の評価にギャップが生じることにある」と野坂氏は語る。これはどういうことなのか?
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企画管理部技術教育グループ長 野坂博氏 |
「実は、合併した後の4社の"融合"という強い狙いがありました。スキル診断制度での面談を通じて、上司と部下との良い意味での葛藤をどんどん推進して、社内に揺さぶりをかけながら意思疎通を図る。社員一人ひとりが自分の現状レベルに安住せず、もっとレベルを高めていかなければこの業界では勝ち残れない、という危機感があります。そのためにも、まずは上司と部下の間で議論が必要なんです。しかも論理的な議論が。経営陣にこの制度の導入を迫った理由はそこにあります。それまで、上司は真っ当に部下に対峙せず逃げていた面があります。上司と部下の間の評価ギャップは、熱い議論を巻き起こす恰好の材料でしょう」。
狙いはもう一つある。自分の好きなことを同じポジションでやり続けたい――こう考えるベテラン社員が少なからずいるというのだ。彼らは、自分の得意分野を意図的に隠す傾向がある。なぜなら、それが知られると、それを活用すべき新しい仕事に回される恐れがあると考えているからだ。誤解を恐れずに言えば、自ら進んで新しい仕事をやりたくないというわけだ。
「もっとやるべき新しい仕事が社内にはあるわけです。だから、今の仕事から"はがして"新しい仕事をさせたいのですよ(笑)」と野坂氏は語る。
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