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山崎将志(やまざき・まさし) 
東京大学経済学部卒。アクセンチュアでヒューマン・パフォーマンス担当シニア・マネジャーとして、変革マネジメント、組織・業務革新、ナレッジマネジメント、e-ラーニングによる人材革新など、人材、組織に関するコンサルティングを手掛ける。主な著書に『eラーニング 実践的スキルの習得技法』(ダイヤモンド社)がある。
● 経営環境はいま、日々ドラスチックに変化している。変化に臨機応変に対応していくためには、従来の「ピラミッド型の統制型組織」から、プロジェクト単位の「ネットワークコラボレーション型組織」への移行、といった経営改革が求められている。
● それに伴い、人材育成の面でも、環境変化に素早く対応し、新たな知識やスキルをタイムリーに学ぶことができる仕組みを整備することが必要だ。そのためには、「e-ラーニング」や「ナレッジマネジメント」などITの活用が欠かせない。その考え方や方法について、この分野におけるコンサルテーションの第一人者であるアクセンチュアの山崎将志氏に話を伺った。
― いま、日本経済は元気をなくし、企業で人が育つ土台も崩れているように思います。

 今回のテーマは人材育成と言うことですが、まず、企業経営を取り巻く環境の変化と、それにどう対応すべきかからお話しした方が分かりやすいでしょう。

 ご存じのように、テクノロジーの進化や国際政治情勢、経済動向から個々人の趣味嗜好、流行まで、経営環境は日々ドラスチックに変化しています。このような状況の下、経営の不確実性はますます増大しており、「戦略立案→実行→評価」といった経営サイクルをこれまで以上に速いスピードで回さなければなりません。机上での分析や検討を精緻に行っている間に、前提となる経営環境が変わってしまい、実行段階では戦略そのものが意味をなさなくなっているようなケースは、枚挙に暇がありません。

 そこで重要になるのが、マネジメントの改革です。

― どうすればいいのでしょうか。

 まずは、組織モデルの変革が必要です。端的に言えば、従来の「ピラミッド型の統制型組織」から、プロジェクト単位の「ネットワーク型コラボレーション組織」へ移行させるような改革です。ただし現在の企業では、形だけを整えて中身が伴っていないケースがほとんどであることが残念ですね。プロジェクトから出てきた素晴らしい改革案が、例えば役員会で握りつぶされる、あるいはその議論に3カ月も半年もかけている間に現場がやる気をなくしてしまう。そのような問題が残されていますが。

 次に重要となるのは、リーダーシップの見直しです。経営トップは、変化に直面しているミドル層、つまりより現場に近いところに大幅に権限を委譲し、経営サイクルをもっと短縮化・不定形化・アットランダム化して、臨機応変に環境変化に対応させていくことだと思います。

 そして3つ目に、権限委譲された現場が、より高いパフォーマンスを高めるための環境を整備すること。つまり、eラーニングとナレッジマネジメントが欠かせません。ここはITが最も活きてくる領域です。

 こうしたマネジメントの改革を実行できた企業では、GEやトヨタなどの例を挙げるまでもなく、新しい人材がどんどん育っています。具体的に言えば、環境変化に直面した現場の当事者が、必要性を自覚して新たな知識やスキルをITサポートのもとで適宜、自ら学んでいき、次の機会にそれを活かしてさらに成長していく……これが、今後の人材育成の新しい方向性だと思います。

― 従来の人材育成の取り組み方ではダメだと。

 すべてがNGというわけではありません。従来の方法だけでは限界が見えてきている、ということです。

 学習とは実践です。企業がやるべきことは、従業員が与えられたミッションをいかに効率的に達成し、期待以上の成果を上げさせるためのサポートを提供できるか。これが、新しい人材育成の取組みのあるべき姿です。

 これまで多くの企業で実行されてきた全社一斉の階層別・職能別カリキュラム、あるいは通信教育や集合研修といった形態に頼った研修だけでは、先ほど述べたように、現在起きている経営環境の急激な変化に追いついていけません。業務と直接関係のない教材をベースとした、“福利厚生的な”研修を「人材育成」と称してやらせるのではなく、いま、まさに直面している課題を解決するサポートをし、従業員にどんどん成功していってもらうこと。これが求められているのです。

 そこで、現場に権限を大幅に委譲し、現場で適切に対応してもらう。そのような意味では、「新しい形のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」と言えるかもしれません。環境の変化に伴い、新たな知識やスキルを必要とした現場の当事者が適宜、自ら学んでいけるようにする。これがポイントです。ここにITが必要不可欠な要素として登場します。「見て覚えろ」「仕事のやり方は盗むものだ」的な旧来のOJTとは若干異なります。ITの活用によって、伝える側の“形式知化”の努力が必要になる点、それから一度作られた“知”(ナレッジ)が共有される点などが違いです。

― 例えば、アクセンチュアではどのように対処しているのですか。

 当社では、最近はCRM(Customer Relationship Management)やSFA(Sales Force Automation)、SCM(Supply Chain Management)などといったITを活用した先進的な経営手法を顧客企業にコンサルテーションしています。今はこうした領域にフォーカスしていますが、経営環境の変化を睨んで、サービス領域を常に入れ替えています。また、現在アクセンチュアには、世界47カ国で7万5000人の社員が在籍しています。この7年間で倍増しました。その間、対象とする産業領域も大きく広がりました。

 かなり短い単位で修正されるサービス領域、拡大する人員の数、そしてインターネットの普及により、ますます小さくなる顧客と当社コンサルタントのスキルギャップ・・・。常に顧客の期待を上回るサービスを提供するために、個々が日々研さんを求められる世界にいて、この経営システムの中でいかに実効の上がる教育システムをどう構築するかが課題となっていました。

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