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経営環境のドラスチックな変化に柔軟かつ的確に対応するため、企業は派遣や業務委託といった多様な"非雇用"の労働力を積極的に導入しつつある。それと同時に、マネジメントやコミュニケーション、人材育成のあり方も変質している。 |
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こうした「変化の時代」に、新たな事業目的をタイムリーに反映し、業績を上げるための能力開発、組織開発の方法論として、"ワークプレイス・ラーニング"という新しい概念が注目されている。 |
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「業績を挙げる場での、業績と学習の同期化」という新しい試みによって、「個人やチーム、組織は、顧客や市場の変化を誰よりも早く発見し、新たな事業を生み出すことのできる独自の能力を持ちうる」という仮説がいま、立証され始めている。最新事情も含め、リクルート
ワークス研究所所長である大久保幸夫氏に話を伺った。 | |
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相変わらず、日本経済に元気がありません。こういう時こそ、企業は人材育成に力を入れることで事業を立て直していくべきだと思います。どのようにお考えですか。 |
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私は、必ずしもそうではないのでは?!という見方をしています。
前提として、2通りの経営者の考え方があります。まず、いま言われたように「企業とは人材である。企業の永続的成長のために人材育成は不可欠である。そのためにはしっかりした教育制度を構築する必要がある」という考え方です。これは日本の経営者に根強い考え方と言えるでしょう。
もうひとつは、「人材とは、環境の中で勝手に育つものである。すなわち、Off-JTなどの別の場ではなく、仕事をさせることが教育であり、仕事の中で学んで成長していく」という考え方ですね。
近年のように経営環境がドラスチックに激変していく世の中で、5年先、10年先を見据えて、じっくり教育に投資しても、その投資分を回収できるかどうか分からない。教育効果が出るころには離職しているかもしれない。そんな投資は株主に説明できる合理的な投資ではない――これが後者の考え方の背景にあります。
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相反する考え方ですね。ある観点からは、どちらも正しいように思いますが |
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しかし、この2つの考え方は、実は通底する部分があるのではないか、と私は感じています。というのは、前者の「人材育成不可欠論」にしたところで、育成すべきは事業変革できるような一部のリーダーを指していることが大半だろう、と考えるからです。
したがって企業にとっては、全ての人に教育投資をするということは、必ずしも当然のことにはなっていない。私はこう見ています。
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