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では、大久保さんご自身としては、どういったお考えをお持ちなのでしょうか。 |
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まず、人の力に頼る企業なのか、ビジネスの仕組みに頼る企業なのかという、企業の戦略によって変わってくるでしょう。積極的に言い換えれば、これをきちんと考えるのが経営トップです。
それこそ、人材の知的能力が資源であるような企業では、能力主義を導入して、社員一人ひとりと対面して経営していかなければなりません。
ここで注意すべきは、「日本企業のエリートはたいして強くない」ということです。本当の意味でのエリートは日本企業にいないのでしょう。つまり、一見エリートと思われる人材だけで外国の企業と闘っても勝てるとは思えません。日本企業の強さは、平均的な中間層による総合力にあると思うからです。それこそ"プロジェクトX"の精神ですね(笑)。ですから、そういった中間層のモチベーションをいかに高めて発揮させるか。これが重要だと思います。
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では、もう片方のビジネスの仕組みに頼る企業の方はどうなのでしょう。 |
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例えば、企業の永続性などを考えず、とにかく"走れるだけ走って"、目の前の収益を稼いだらさっさと会社を処分し、また次のビジネスに向かう――こういう経営戦略もあるわけです。先行者メリットだけを追及する方法ですね。
そのような企業にとって、社員は言わば"ツール"であり、丁寧に育成する必要などないわけです。必要な能力やスキルを持つ人材は、その都度、外部から調達すればいい。
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― なるほど。 |
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実は、これら2つの考え方は融合しつつあると思います。
これは全般的に言えることですが、企業はもはや正社員だけで回っているわけではありません。経営環境のドラスチックな変化に、より柔軟かつ的確に対応するため、ご存じのようにパートやアルバイト、業務委託、派遣、フランチャイジー、アウトソーシングなど、多様な雇用・就業形態の人々で構成されるようになってきています。ごく一部の正社員が"コア人材"として、これらの人々を使って一つのビジネスモデルを回している。私どもワークス研究所では、このことを『人材ポートフォリオ』と呼んで、企業の持続的競争優位性を構築するための人材ポートフォリオ管理のあり方を研究テーマの一つにしています。
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人事管理も複雑化しているわけですね。 |
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おそらく、人事部ですべては管理できていないでしょう。事業部ごとの判断で採用するケースが大半だからです。だからこそ、人事部がすべて見ることで、企業経営の視界が変わってくると思います。どんな仕事にどんな人をどう配分したらいいか、総合的な視点から"設計する"わけです。
さらに、そういった多様な雇用・就業形態の人々とどうやってコミュニケーションを取ればいいか。どのようにナレッジを共有し、どうラーニング(教育)を行えばいいか、ということも考えていかなければなりません。
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