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― 具体的には、どういうことですか。 |
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アルバイトや派遣社員など、正社員として雇用されていない人は、企業という組織に忠誠心など不要です。従来の正社員間のマネジメントでは、忠誠心を前提に「上司の背中を見て覚える」とか、「酒場で思いを伝える」などといった曖昧なものでもよかったわけです。
しかし、正社員として雇用されていない人たちに、そういった"以心伝心"的なコミュニケーションは通用しません。事業の目的などをきちんと説明しなければ、内容が分からないので動けない。つまり、アルバイトや派遣社員といった人材を上手にマネジメントし、彼らの能力を最大限に発揮させるには、きちんと説明する力が求められるわけです。
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そうした説明能力は、日本人には不得意の領域ですね(笑)。 |
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日本人は、多くを語らずして通じ合えるような、文脈や背景を共有する人とだけ付き合おうとします。いわゆる"狭い仲間との高頻度のコミュニケーション"、が特徴ですね。
しかし、これからは説明しなければ分からない多様な人たちと仕事をする時代になっているのです。そういった多様な人たちとのコミュニケーションや情報管理などに、ITが活用できると思います。e-ラーニングもその一つでしょう。
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e-ラーニングなど、ITツールを活用した組織力強化の動向を どう見られていますか。 |
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パソコンの端末画面を長時間見つめているのは非常に疲れます。e-ラーニングが定着しないという場合は、大抵、1回当たりの勉強する量が多いのですよ。今は"1回15分"がキーワードになっているんです。これならe-ラーニングに取り組める。ここがポイントです。
実際に"1回15分"のe-ラーニングがあります。英国で2000年の4月からスタートした国家的なオンライン学習サービス「ラーンダイレクト」です。これは、15分単位の教育コンテンツによって構成され、その種類は1000を超えるものになっています。
ところで今、仕事中に分からないことがあったら、ちょっと見て理解して、また仕事に戻る、といった学習スタイルが登場しつつあります。"ワークプレイス・ラーニング"という新しい概念で、私どものワークス研究所の機関誌『Works』で特集を組んで事例を紹介しています。
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― どういった概念なのでしょうか。 |
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"ワークプレイス・ラーニング"とは、「顧客価値の実現の結果としての業績を生み出す現場に、"ジャスト・イン・タイム"で新たな能力の開発を伴う学習を供給する機能や、そのための仕組み」を言います。
日常の瞬間、瞬間で、顧客価値を実現させる個人やチームがどう動けば、最終的に目指す事業目的を獲得できるのか。変化の最前線である現場でこそ分かる、真の問題の発見と解決、そのための新たな知識やスキルの獲得が問われているわけですが、それに応える新しい学習システムです。
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