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― 具体的にはどういった教育システムを採用されているのですか。

 基本は、プロジェクトへの任命と、その中での実践と成功が人材育成の基本スタンスです。それをサポートするために、ナレッジマネジメントとe-ラーニングの環境を整備しています。これらは業務システムと教育システムの両面を持っています。

 まずナレッジマネジメントとして、「ナレッジ・エクスチェンジ」という仕組みがあります。これを利用して、社員は業務で必要な時にに適切なナレッジを入手しています。中には、提案書の雛型、分析ツール、過去の事例集、専門家へのアクセスなど、様々なタイプのものがあります。

 もうひとつは、「myLearning」(マイ・ラーニング)というe-ラーニングの仕組みです。そこには、所属グループやポジション(役職)に応じて、受けるべきラーニングコンテンツのリストが表示されます。e-ラーニングや書籍の紹介、集合研修の案内などに分かれていますね。e-ラーニングだけで1800くらいのコンテンツが揃っています。

 複雑化した経営環境で高品質なソリューションを提供するための「キャリアの自己責任化」という流れの中で、いま会社の方針として注力しているサービス、それから今後ブームがくると思われるソリューション、そして自分のキャリアを睨んで、自分にとって必要なこと、やりたいことを自分で決めて学ぶ。ここがポイントです。

 “お仕着せ”のトレーニングもありますが、必要な知識やスキルを、必要な時に、必要なだけ取り寄せることができる……いわば「ナレッジサポート」といった性格のツールが中心です。

 ナレッジ・エクスチェンジと、myLearningをツールとして説明しましたが、実はそれらはプロセス全体として機能しています。現場で生まれたナレッジをどう共有化するか、現場ですぐに使える知識をピンポイントの対象者に、どうタイミングよく届けるか、などといったことです。

 また、新しい人材育成モデルの中では、ナレッジマネジメントとe-ラーニングを分けて考えることに意味がありません。当社も、プロセス全体としてとらえた時には、その境界は非常に曖昧です。

― 実際の効果はどうでしょう?

 従来は研修全般に全社の売上高の約7%から8%という相当な金額をかけてきましたが、e-ラーニング化によってかなりの金額を削減できました。その削減分を、さらに質の高いラーニングコンテンツの調達のために再投資する、そして社員が自己責任のもとでどんどんスキルを獲得し、結果としてお客さまへのサービスレベルが向上する、という好循環が生まれつつあります。

 このような「新しい人材育成」のための仕組みをビルトインすることで、人材の成長が続き、ひいては企業経営の安定成長につながるのではないかと思います。

― 組織作りの面では、どういった変革をなすべきなのでしょうか。

 先ほども触れたように、環境変化に柔軟に対応するには、「プロジェクト型」「協働型」の組織が有効です。そして、一人の人間が複数のプロジェクトに参加し、終了すれば適宜解散する、といった組織運営スタイルになるでしょう。

 また、人材に対する評価システムも、従来のような年次サイクルの目標管理や定性的項目をベースとした人事考課だけでは、現実的に機能しないでしょう。複数の人間による多面的な評価を、行動プロセスや結果をベースに、プロジェクト単位でより短期的にフィードバックするが必須となるでしょう。

― 経営者のあり方、関わり方も変革を迫られますね。

 これまで私が関わったプロジェクトのうち、成功している組織を調べてみると、次のような良い“循環”が出来上がっていることが分かります。

 プロジェクトリーダーは、十分な権限を持ち、ファシリテーターとしてプロジェクトメンバーに検討と実行を任せ、常に綿密なコミュニケーションを実行しています。すると、メンバーは言いたいことをいつでも言えて、やる気が出るし、メンバー同士のコラボレーションがどんどん促進され、新たな成果が次々に生まれる……これをしつこく継続することで、業績が挙がっていくんですね。

― 経営層の役割は、現場のリーダーの発掘と、コミュニケーションおよびコラボレーション促進にあると。

 一番重要なのは、まず、明確な方針やビジョンを打ち立て、それを強いメッセージとして社内にしつこく出す、ということでしょう。そのメッセージは、部署によって解釈が異なるかもしれない。場合によっては利害が対立することもあるでしょう。そこで徹底的に議論し、走りながらその時の最適解を見出していくわけです。ここでも、経営層は細かいことにいちいち口を出さず、方針にのっとっている限りは素早く意思決定を行う。この多様性の時代に、全員が一つのことに納得するとは到底思えませんから。

 「マネジメントの“グル”」と言われている、ヘンリー・ミンツバーグという学者がいます。)「MBAは“B”(ビジネス機能)に重点を置くあまり、“A”(経営執行能力)を軽視する傾向が強い」と言って、経営テクノロジーだけにフォーカスすることを否定している人です。彼は「人間感覚のマネジメント」という本を書いていますが、組織においてはいかに様々な考え方やあいまいさを取り込むかが重要である、と言っています。

 それに絡んで、最近、多様性のマネジメントが重要視されていますが、多様な人材を持つということは、ダーウィンの進化論のごとく、企業は多彩な戦略オプションを持つことができ、変化し続ける時代にあって、存続のために最適な遺伝子を残して生き続けることができる、ということなんだと、私は解釈しています。

 さらに、トップの役割として見逃してはいけないのは、経営のメッセージを伝えた上で、自らが積極的に現場とコミュニケーションをとらなければならない点です。議論によって、軸はぶらさずに、互いの進むべき方向性を常に修正していくことで、実行のスピードが早まります。また、トップからの直接のコミュニケーションによる、メンバーのモチベーション向上には、目を見張るものがあります。

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